置き時計

19世紀終わり頃のイギリスの置き時計(20,5 x 10,5 cm)。ゼンマイを巻くと二日程動きますし、時間も割と正確です。カチカチと優しい音が室内に響きます。置き時計は時々仕入れますが以前ほど素敵な物を見掛けなくなりました。

ロンドンのピカデリーにある本屋 Waterstones に行き、沢山の美しい本に囲まれて過ごすのは至福の時間です。階段を昇り降りしながら、大きなフロア全体に広がる本を俯瞰しながら何時も思うのです、イギリスの本は美しいな、と。日本の本屋に行くと、目立たせることしか考えていないようなけばけばしい色使いの表紙、帯に書かれた煽情的な推薦文、「余白の美」からは程遠く過剰な文字が並んでは『買ってくれ』と訴えんばかりの下品な表紙、こんな本が一度に目に飛び込んで来るんです(そう言った点では古本屋のほうがはるかに落ち着く)。岩波書店の本なんかでも最近出版された本のデザインは酷いのが時々あります。本の内容は本当に本を好きな人しか読まないようなものなのに、表紙のデザインも安っぽくチャラチャラしてて帯の推薦文が週刊文春並みの酷さ。まあ、簡単に言えば、売りたいんでしょう、今まで手に取らなかった層をそのシタシミヤスイデザインで取り込みたいのでしょう。でも、本当にその本を読みたい所有したい読者にとっては本当に残念なことですし、自分の書棚に置いても出来れば別のカバーで覆い隠したいくらい酷いのです。本の内容と、デザインの乖離が甚だしく、腹立たしくもあります。昨今出版される本の中には装丁等が読者を馬鹿にしてるんじゃないかと疑りたくなるような一貫性を欠いた酷いものが多くなりつつありますし、批判眼を備えた、厳しい読者と呼べる人達がマーケットに影響を与えるほど充分数存在しないのでしょう。藤原書店の社長の方が、今の出版界の危機は編集者が育っていないことだ、と新聞で仰っていたのを思い出します。出版社の方には、色々大変でしょうが、時間が経っても色褪せない本を一冊でも世に送り出して欲しいと思いますし、そう思ってる人は意外と多いと思いますが。