エナメル彩の妖精ブローチ

イギリス、20世紀初頭のシルバーにエナメル彩のブローチ(長さ、5,9 cm、2,2 cm)。真ん中にちょこんと膝を抱えて座るのは、ピクシー(妖精)です。アクセサリーですが御守りでもあります。ピクシーは好きなモチーフなので他にも幾つか持っています。

今日の午前1時半頃目が覚め、それから4時まで本を読みました。パトリシア・ハイスミスの恋愛小説「キャロル」の最後70ページ程を読み終えました。明け方に440ページを全て読み終え、僕の気持ちは感動と言うような易しいものでなくて、心を奪われたような放心状態でした。両の目に薄く涙が滲み、それは小説に感動したこともあるけれど、多様な理由が自分の中で混じっていて、一言では言い尽くせない多くのことが塊となって去来して、ただそれが薄い涙として現れたのです。暫くは他の本は読めないような気分にも襲われました。食べ物で言うと、極上の最高に美味しいオートミール、それもミルクと微量の塩だけで作ったものに蜂蜜を入れたもの。そんなものを食べた後では当分何も口にしたくないと感じる、それに似たものです。今この時期にこの小説に出会ったことは忘れられない思い出として僕の中に刻まれると思います。いや、僕にとって、ある「出来事」だったと言っても言い過ぎではないような気がしています。

僕が皆さんにこの小説を勧めるかどうかはよく分かりません。この「キャロル」についてただ言えるのは今の日本に氾濫している幾多の小説と呼ばれているもの、とは全く別の次元で紡がれた言葉だと言うこと。古典たり得る小説と、単なる消耗品との違い、と見てもいいかもしれません。もし、濃密な読書体験をしたければこの小説「キャロル」はそれにきっと応えてくれると思います。