1800年頃のデザートナイフ(18,6 cm)、シルバーにハンドルは白蝶貝。デザインもフランスの物にしては直線的でストイックな印象です。レターオープナーとしても使えそうですね。
スクリコラージュ 4
今朝、りんごのジョナゴールドを薄くスライスして、それにグリュイエール・チーズを載せて食べた。美味しい、この組み合わせは最高に美味しい。暗めの日々にはこんな小さな楽しみが何時もより大きいものに感じられてしまう。
「きのこ文学大全」(飯沢耕太郎 著、平凡社新書)を部屋でパラパラ捲っていたらパトリシア・ハイスミスの小説に言及していた。その夕方郊外の大型書店に行き、河出文庫から出ている彼女の小説を数冊手に取り、「キャロル」と言う自伝的なレズビアン恋愛小説を買った。原書を見ていないのでなんとも言えないが、読み易いがしっかりとした言葉で訳されていて好感の持てる翻訳だ。それよりも僕の気を惹いたのは表紙にエドワード・ホッパーの絵 'Automat' が使われていることだった。今の僕が最も観たい絵の一つ。たとえ文庫の表紙に過ぎないとは言え、この絵を身近に置いておきたいと思ったのだ。
「きのこ文学大全」には[村上春樹は「きのこ文学者」に非ず]と言う見出しで始まる文章があり、僕は思う。矢張りね、彼は「きのこ」には興味がないだろうし、僕が彼に興味がない訳もその辺りかもな、と妙に納得する。著者によれば日本有数の「きのこ文学」の書き手は宮澤賢治と泉鏡花らしい。確かに「きのこ」は興味深い存在だ。異界への入り口に位置して、此方と彼方を繋ぐようなものにも思える。「きのこ」で何か短編が書けるなと思いノートを取ってみた。近いうちに書いてみようと思う。
昔、アイルランドの北西にある小さな街、バラナに毎月車で通っていたことがある。そこには当時日本人補習校の分校があり、校長先生と二人で約四時間田舎道を走って通っていた。と言っても僕は大体助手席でいびきをかいていただけだが。あるとき、その分校の生徒の小学生の女の子達と数人で街の外れにある森に散歩に行った。深く大きな森で、その森で美しい木の枝を拾った記憶がある。その散歩の途中、森の暗がりの茂みの中でひっそりと咲くラベンダーの花たちが集まる様子はまるで妖精の棲み処のように、神秘さを帯びた美しさだったのも未だ忘れられないでいる。
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