オランダの壁掛け花入れ。

オランダの壁掛け花入れ(タテ、ヨコ、タカサ 9,4 x 17,7 x 11,2 cm)、壁に掛けられるように後ろに穴が開いています。チューリップでも活けるんですかね。恐らく19世紀の後半位の物ですかね。イギリスで仕入れました。珍しい物だと思います。

さて、先日アイルランドのことを少し書きました。これからも少しずつ時系列的にではなく思い付くままに、色んな人を登場させながら書いていきたいと思います。多分一冊の本が書けるくらい登場人物には事欠かないと思います。ただ、三十年位経っているとは言え、まだ書けない内容や、中にはアイルランドで地位ある仕事に就いている人もいて、本人の許可を得ないと書けないこともあり、そう言う意味では限定された中での物語となります。でも、あの三年半の思い出は矢張り宝のようなものであり、忘れてしまうには惜しいものです。

当時、ダブリンで仲の良かった変わり者の中に、クリスチャンとノーラというカップルがいました。クリスチャンはパリ出身、ノーラはアメリカ出身で、初めて何処で出会ったのかはよく覚えてはいませんが、クリスチャンの名前は僕がよく遊びに行っていた音楽評論家、D氏から時々聞いたりしていて、パリから来た変わった奴がいるのは知ってました。

ノーラのほうもいつ出会ったのか曖昧。ある日ダブリンのメインストリート、グラフトン通りを歩いていると、路上でチョークで宗教画を書いている奴がいて、これがびっくりするくらい上出来で、それが顔を上げてみるとノーラだったり、何処でかははっきりしないがピアノの前でバッハの無伴奏を暗譜で淀みなく弾いていたり。変わった女の子でした。二人でカフェでその当時の僕には珍しかったベーグルを一緒に食べた記憶があります。クリスチャンも全く働いておらず、古い建物の最上階の屋根裏のような場所に住み、何時も何か壊れたピアノを修理したり誰かに頼まれたペンキ塗りなどをやってました。ある夜、クリスチャンの家にみんなで集まり、その日は皆んなでダブリンの南にあるウィックロウの丘に登り、中にクラシックのピアニストや他のジャンルの音楽をやる人がいたからか、クラシックはロックよりも優れた音楽なのかどうかで、道中激論になり、その後どういう経緯か、彼の屋根裏部屋に皆でいたのです。変わった部屋で、広い部屋の真ん中にグランドピアノがあり、その上をピアノ線が走っていて、そこから何枚かの食パンが吊るされていて、彼は時折ピアノに座ったまま手を伸ばしそれを食べるんです。皆んなが見守るなか、彼がショパンのピアノ曲を弾いてくれて、彼が弾き終わると、どう感動的だったの分からないのですが、側にいた年配の女性が彼を引っ張るようにして抱き付いたり、拍手喝采で凄い盛り上がり。そんなに上手かったわけではないが、味のある変な演奏で、まあ後は皆んなその場の雰囲気に酔っていた、わけですね。

最後に二人に何時会ったのかも記憶にありません。どうしてるかな今頃。正に高等遊民と呼ぶに相応しい二人でしたね。懐かしいです。