19世紀初頭の武骨なグラス

イギリス19世紀初頭の武骨なグラス(11,5cm x 8,6cm)です。一見何処にでもありそうな、分厚くて装飾も無い、この店にあっても殆どの人が見過ごしてしまうようなグラス。約二百年前のグラス。写真にあるように小傷が沢山入ってますね、中流以上の人が雑器として日常使いしていたのでしょう。傷があることからも雑に使われていた訳です、パンチかワインでも飲みながら紳士が集まりどんちゃん騒ぎを演じていたのかもしれませんし、口論、議論、文句の言い合い、そんな中で使われていたのかもしれませんが、奇跡的に二百年を生き延びて来たんですね。非常に強運の持ち主のグラスです。

手に持つと適度に重く、力強さを感じるグラスです。武骨で物言わぬけど頼れる相手、何時までも飽きないんです、こういうグラスが一番。一見全く魅了がないように見えて何時までも飽きないグラス。そう言えば正確な言い方かもしれません。

イギリス18世紀から19世紀初めにかけてのアンティークはその魅力が分かり難い。僕もこの世界に入りたての頃はその深さが余り分かっていませんでしたね。少なくとも十年は掛かったと思います、その魅力が分かってくるのに。それだけ控え目で、一見どうってことないんです。本当にともすると詰まんなく見えるんですね。書や絵画でも音楽でもそういうのはありますよね。イギリスのアンティークも同じなんです。時間が掛かるんですね、分かろうと急いてみても中々その姿を見せてはくれません。品が良すぎて取っ掛かりがないんです、この時代のイギリスの物は。だから難しい。

そう言えば最近ふとしたことから、エドワード・ホッパーの絵の凄さが初めて観えたんですよ。昔は表面しか見てなかったので、詰まんない単にスタイリッシュなだけの物かと大勘違いしてました。馬鹿でした。矢張り何でもその時が来ないと見えて来ないんですね、そういった意味では歳をとるのも悪くないですね。