仕入れの真ん中まで来た。

一昨日から田舎周りをしていて今日お昼の電車でロンドンに戻って来た、路線にもよるがロンドンの地下鉄がストをしていたので地下鉄もノロノロ運転で行ったり止まったりで、乗ってみると皆んな避けているのか意外とガラガラで荷物を沢山抱えた僕には有り難かった。オックスフォード・サーカスで乗り換えようと通路を歩いていたらもの哀しいアコーディオンの音色が聴こえてくる、背中にも荷物を背負っていたので余り歩きたくはないのだがそれ以上に音色の哀しさに惹かれて音の聞こえてくるほうを探ると、エスカレーターの上から聴こえる。そこで降りる訳ではないのでエスカレーターに乗る必要はないのだがどうしても弾いてるのが見たい気持ちでエスカレーターに乗った、上に上がるとどうだろう四十いかないくらいのルーマニアか何処かのロマ風の黒髪の小柄な男性だ、床に座って弾いている。地元の有名な曲を弾いてるのだろう、おまけに地下通路は音の響きも良い、僕は先ずカゴに1ポンド硬貨を入れ少し頭を下げ、詰まり会釈して後ろに下がりスマホで動画に収めた、本当に哀しい響きで、上手いというより彼の今の境遇の哀しさが音になって聴こえてくるようで、僕は結構感動した。長いことロンドンに来てるからこういうのには慣れているけれどそれを超えた何かが僕の心に響いてきた。彼も弾いていることを楽しんでいるように見えた、前を通り過ぎる人の鈍感さには内心驚いていた。歩きながらスマホを向けて数秒間撮影する若い子、無関心に通り過ぎる人々、この音を聴いてそのまま通過出来るなんて全くどうかしている、きっともうバカになってしまったのだろう、不感症なのだ。僕は大きい荷物を肩に二つ掛け手にも持って遠回りして聴きに来たのに、皆んな通過している、音に対する感性を失っているのだ、こんなに美しい音が鳴り響いているのに、終わっている。

また出逢いたいがどうだろう、今度もし逢えたら話し掛けてみたいなと思う。