明日はダブリンに日本人の友人に会いに行く、彼女は日本語と英語の両方で詩を書く、バイリンガルの詩人だ。彼女とは三十年以上前ダブリンの日本人学校で一緒に教えていた。それ以来会っていないので三十三年振りの再会になる、お互いに読んでいる本の情報などをメールで交換してしているが会うのはとても久し振りなのだ。ダブリンに行くのは確か二十八年振りだと思う。友人に、塩井さんダブリンに来たら行きたいとこありますか、と訊かれたのだが、僕はダブリンでパブに行き美味しいギネスを飲みたいと思った。日本にもイギリスにもギネスはあるがあれは偽物だ、矢張りアイルランドに行かないと美味しいギネスは無理なのだ。ビールは造られた場所の近くで飲むのが一番いいとよく言うが、今年の夏に九州に帰省したときに家の近くにあるサッポロビール工場のレストランでサッポロビールを飲んだがあんなに美味しいビールはなかった。ダブリンでパイント一杯でいいからギネスを飲めたら最高だ、僕の中では沖縄の泡盛とアイルランドのギネスがお酒の両横綱だ。両方とも大国に虐められた国(沖縄は王国だった)だがお酒に関しては虐げられた彼らのほうが美味しいものを飲んでいる。このことに関しては一考察に値すると昔から思っている。
イギリスの仕入れも二週間を切った、忙しく動いていたらあっという間に時間が過ぎる。昨日も仲のいいディーラーに何人も会った、ある田舎の小さなアンティークフェアーに友人が何人も出ていて皆んな冗談ばかり言いながら楽しく売り買いしている。僕が友人のDから買っていると横を仲のいいRが通り過ぎながら僕に、マスオ、こんな胡散臭い奴から買うなよ、と冗談。Kが綺麗な紫のグラスを売っているので僕が、これいいグラスだね、と言うと横で売ってるRを見ながらRから仕入れたんだ、と言う、それを聞いたRが寄って来て、Kがどれだけ値段を吹っかけるか見てみようじゃねえか、とまた冗談、更にRが、マスオ、先週俺んとこでこれ見ただろ覚えてないのか、と言われる。Dが自分のところでミニチュアの兵隊さんが七十個箱に入ったセットを見せながら僕に、マスオこんなの要らないよね、これ面白くないよ、兵隊さんが七十、将校が二つ、と言いながら幾つか出してガラスケースの上に並べる。彼は昔このホームページで書いたビルゲイツを追い出したあの彼だ。彼から買うと彼はレシートは書かずに、その日の売り上げ帳を僕に見せて、ここからここまでがマスオのだから僕の字が読めるなら写真撮って、と言う遣り取りを何時もする。僕はカメラで彼の手書きの癖字を写真に撮る。彼の字を読めるようになるのに何年か掛かった。僕はDはビルゲイツよりも幸せな人生送ってると思う、人の人生を比較するのは無意味なことだが。フェアーの主催者の八十代の男性にヨクモクのお菓子持って挨拶に行く、また後でもう一度行くと僕があげたヨクモクのスチール箱を顔を近づけ熱心に眺めている、日本の物はディテールが素晴らしいよ全く、と何処が優れているか熱心に語る。
僕は一息ついてから公民館のようなフェアー会場にある給食のおばちゃんがやってるようなカフェでバーガー食べながらミルクティーを飲む。こういうときのこんな素朴なものが案外美味しく感じられるから味覚とは不思議だ。
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