近くの古本屋で「上海コレクション」(平野純 編、ちくま文庫、1991年刊)を百円で買う、色んな作家が上海について書いた文章を集めた本、吉川エイスケ(吉行淳之介のお父さん)なども入っている、「有吉佐和子の中国レポート」という本からの抜粋も入っていて読むととても面白い、元の本をネットで注文した。僕の最近の本探しは、古本を古本屋で先ず買い、その中に出てくる作家や本を(大抵の場合古本なので)「日本の古本屋」のサイトやamazonなどで買うことが多い、新刊で買えれば本屋に行くこともあるが、欲しい本の殆どは絶版物だ。この有吉佐和子の文章を読んでいると上海に行ってみたくなる、今の中国は行きたくないけど上海は行きたい、今のアメリカは行きたくないけどボストンは行きたい、そんな気持ちが湧いてくる。
実際僕はアメリカに行ったことがない、僕の知っている「アメリカ」は沖縄の米軍基地だけ、普天間基地にはよく遊びに行った。嘉手納基地の将校クラブも二、三度行ったことがある。基地の中を車に乗って走りながらフェンス越しに沖縄の人が暮らす家並みを見る、詰まり何時もと視点が逆転して米軍基地から沖縄を眺めるときの景色には独特なものがある。フェンスの内側の家並みはアメリカ式にゆったりと十分なスペースを空け建っているのに外側には小さい家がぎっしりと隙間無く建っている、その内と外での非情なコントラスト、そして自分が呑気にアメリカ側に立って日本を眺めているという罪悪感のような感情。そう言えば沖縄に行って直ぐの頃、米軍基地の中にある住宅街の草刈りのバイトをしたことがある。大きなコンクリートの平屋の庭の草刈りをしていたら家の中から金髪の女の子がローラスケート履いて出て来て、草刈りをする東洋人にお構いなく、まるで僕など存在しないかのように短パン履いた可愛い子は長い足で僕の側を滑っていて、僕は勝手に奴隷のような屈辱感を感じた覚えがある。まあその例えは少し大袈裟だが、あの頃の僕は沖縄に行ったばかりで観るもの全てが軽い衝撃だったのだ。しゃがんで草刈りをする自分の側を駆け抜ける金髪の少女、懐かしい遠い昔のシーンだ。その少女も今頃いいオバさんになってアメリカの何処かに住んでいるのだろう、少女時代沖縄の基地に住んでいたことなど恐らく思い出すこともなく。
エンジェル・ケーキという白いケーキを初めて食べたのもそう言えば嘉手納基地の中にある住宅だったように思う。
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