1830年頃のカラフ(18,8 x 9,5 cm)、イギリス製、とても良い物、ハイクオリティー、ネックのところもリング状の装飾がトリプルになっている。左は同時代のワイングラス(14,5 x 6,7 cm)、こちらもハイクオリティーでとてもカッコいいグラス、個人的にも好きな物。手前の小さいグラスは元々は塩入れ(6 x 2,8 cm)だが日本人が見ると酒器みたいだ。これは18世紀末か1800年頃の物。このカラフは堂々としていてこの時代の高級ガラス製品のお手本のようだ。素晴らしい。
学生時代の沖縄にいた頃那覇の沖縄料理店でバイトをしていた、「うりずん」という名の有名店、ここの名物店主だった土屋さんに大学クビ(除籍)になってぷらぷらしていたら、シオイうちでバイトしなさい、と言われ働いていた、ある夜カウンターに五十位の紳士が一人座っていて豆腐餻(とうふよう)だったか何かをつまんでいた。横に常連の男が座っていてこの紳士に豆腐餻について講釈していた、それをこの紳士は嫌な素振りも見せず黙って大人しく聴いていた。この紳士とは、映画評論家で食通でも名の通った荻昌弘だった、彼は隣の沖縄の常連男が言っていることなんか恐らく百も承知なのに、分かってますよそんなことくらい、と言う感じも見せず大人しく礼儀を正して聴いていたその紳士的態度を今でも覚えている。四十年位前のことだ。僕にとって忘れられない人だ、品の良い、出しゃばらず物静かで、それでいて静かで上品な存在感に満ちている、そんな初老の紳士。
何で彼のことを思い出したかと言うと、僕が九州の田舎で偶に会う坊さんが説教のときに必ず、あんたたちは知らんだろうが、と必ず差し挟むのだ、詰まり何も知らんあんたら衆生に教えてやる、とダミ声で言うのだ、そのダミ声は寺のお堂に響き渡り、アンタラハシランダロウガ、と言われる僕は、心の中で、そんなこと知っとるわい、と思いながら帰りの車の中で「うりずん」で昔見た荻昌弘さんの上品な姿が思い出されたのだ。彼のあの上品な態度を真似ることは僕には無理だがせめてそれを思い出しあんな人間に近付きたいと願うことだけは出来るのだ。
0コメント