上から陶器のパイプ、多分オランダ製、真ん中はイギリスの高級パイプメーカー Comoy’s のパイプ、下もイギリスのメーカー Barker のパイプ、全て60年代頃の物。どれも一本目のパイプにするにはハードルが高い、喫いこなすにはテクニックがいるのだ、綺麗なパイプなので買って喫いたくなるかもしれないが少なくとも数年は経たないとパイプに相手にされない。
最近若い人でパイプを始める人が時々来る、女性もいる、二十代から四十代。僕のところで始めた人は最後まで面倒を見るので、最初上手くいかなくても喫い方手入れの仕方等を細かく教える。偶に男の人にいるが、カッコつけたくて始める人がいる。こういう人は大体途中で脱落してやめてしまう、何故か、カッコがつくようになるまで時間が年単位でかかるので待てないのだ。葉巻に比べると遥か道のりは長い。パイプを習うとは呼吸を習うこと、パイプを喫うに相応しい呼吸を身に付けること。パイプを喫うのが上手くなると煙は余り出なくなる、微かな呼吸で喫えるようになる、上手になればなるほど変な言いかただが喫わない状態に近づく。ゆっくり静かに喫えるようになる、それでも、今日は上手くいかないな、という日もときにはある、そんな日は焦らずパイプを置いたり別のパイプに変えたりする、そんな日は何時もと体調が少しだけ違うのだ。無理に喫わなくてもいいし、むきにならないことが大切だ。
パイプにも色んなレベルがあり、同じブライヤー(バラ科の木の根)のパイプでもピンキリ。僕は今まで沢山のパイプに触り喫ってきたので、パイプを見れば喫わなくてもどの程度の物なのかは凡そ分かる、最初はそんなに良いパイプは喫わずに自分のテクニックの進歩に応じて徐々にパイプのレベルを上げていくのが一番良い。良いパイプほどこちらの繊細なテクニックを要求してくる、喫う技術が育たないうちから良いパイプを喫っても仕方ない。僕も昔とても良いパイプを手に入れ喫ってはみたが手に負えなくて五年くらい寝かしたことがある。パイプにバカにされてるのが分かるものだ、君は僕を喫うにはまだ早いよ、だから適当にしかやらないからね、と言われてるのだ。木の根っ子から出来ているパイプには自分の意志がしっかりとあり、それを尊重しないとパイプを壊すことになる。自然(木)にお伺いをたてながら喫うのだ。
また、年齢の変化と共に喫いかたも変化していく、自分の身体に合わせるように喫っていく、歳がいけば若いときのような力に任せたような喫いかたは出来ないし自然自分の身体と相談しながら喫っていくことになる。そこもまたパイプの面白さだ。三十代には三十代の喫いかたがあるし、六十代にはそれに合った喫いかたがある。自分が死ぬ歳まで変化しないということはない、その行き着くところのないのがパイプの奥深さだ。
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