ハーフプライスオヤジ。

今日若い男性が来られてローマ時代の指輪を買って頂いたので磨いていたら派手なアロハを着た七十代の男と若い女性が入って来た。面倒くさい奴で、アンティークのステッキを見せてくれと言うので何本か見せると彼の知識自慢が始まり、僕がローマンリングを磨いていると、ティッシュでこう磨くと良いと的外れなことを言いながら人の買い物を覗いたりで邪魔をする、感じの悪い奴で、僕は早く追い出したいと思いながらリングを磨いていた。男が、さっきのステッキをもう一度見せてくれ、と言うので僕は見せる、幾らかね、三万二千円です、この値段自体昔付けたものなので既に安いのだが、彼は、安くなるかね、ええ少しは、とそこまで来ると彼が、半額とかにならんかね、と言う。僕は元々追い出したかったところに「ハンガク」と言われ、おい、帰れ、いいから帰れ、と静かに言って彼の後を追うように追い出した、最後に僕も腹が立っていたので、どっかで半額で何か買って帰れ、と言ってしまう。店に戻ると二十八歳の彼が、僕あんなの始めて見ました、、と言うので、ゴメンね変なところ見せて、と謝る。彼には悪かった、僕が悪い訳ではないのだが。

こういうのが一年か二年に一人くらい来る。何時も僕はピシッと言う、心の中で、二度とここに来るな、と思いながら。僕が何が腹が立つかと言うと、こういう奴は物をしっかり見ていない詰まり物の価値を分からずにハンガクにしろと言うから。唯今日の奴は東京のステッキ専門店にも行ってるみたいだったので、十分安い値段だと知りながら更にスケベゴコロでハンガクと言ってみたのだろう、その嫌らしい態度に僕は頭にきて、即座に、おい、帰れ、と言った次第。人間が下衆なのだ、顔付きも下品だったが。

(普通はここまで言わないが最初からいけ好かない感じだったので僕も酷い態度になった、仕方ない)

自分がイギリスの色んな処から集めて来たアンティーク達はなるべく品の良い人の元へ嫁いで行くのが良いのだと思う。だからこんな奴が来てもどうにか接点を見つけてまで売ろうとは思わない、僕はその点で商売人ではない、嫌なのだ、そこまでして自分のアンティークを売りたくない。イギリスにも僕のようなアンティークディーラーが時々いる、僕は彼ら彼女らの気持ちが良く分かる、そういうタイプのディーラーは持っている物も独特で面白い、僕は彼ら彼女らとは気が合う。

(英語は he の複数形も she の複数形も同じで they、なのに日本語は 彼 の複数形は 彼ら、彼女 の複数形は 彼女ら、男女混ざった複数形は何? とても不便だし、この辺りも男女不平等だと思う)