釣りをする男二人、版画。

版画(38,5 x 46 cm、額の大きさ)、1920~40年頃。イギリスで仕入れた物だが風景は何処となくてヨーロッパの国を想わせる、釣り糸を垂れる男二人。ぼくはこの版画を観ていてエドワード・ホッパーの絵を連想した。それくらいこの作品も良い。額は普通なのでもっと良いのに変えたらもっと良くなって観えると思う。

暇な日はこうやってホームページの更新をしておく、すると常連さんからメールか電話で連絡が来る、知らない人からは殆ど来ない。偶に怪しい声の男が問い合わせて来る、大体ヤバそうな話し方の人。ぼくは知らない人に売るのは余り気が進まない、だから初めての人には電話で連絡下さいと伝える。メールだとどんな人か全く分からないから。会ったことがなくても電話で何度か話してるとそれなりの関係が生まれる、相手の好みなども多少は分かって来る。九州から偶に電話がかかって来る、一人は佐賀、彼とは二十五年位前に一度会ったきり、今でも電話がある、面白い人だ。もう一人は長崎、彼には会ったことがない、真面目で知的な印象の方だ、気になる物があると電話をくれる。遠距離で骨董の売り買いをするには矢張り信頼関係が重要だ、とても。ぼくがホームページに書いてあることが嘘でないか、物が適正に評価されているか、値段、状態等をこちらが正直に伝えてあるかなど、兎に角相手に信頼されることが大切。ホームページの文章でも、素晴らしい、とても良い、などの表現は多用しないようにしている。冷静な評価が重要。

良くない物を良いと言ったところで所詮何時かはバレルのだ。買った物を家に持って帰り眺めてるうちに冷静になる、時間が経てば冷静に見えてくる。有名なお菓子や料理なども評判だけが先にたって実は大したことのない物も多い、名前だけが独り歩きする。ブランド品もそう。お菓子なども有名になり大きくやりだすと大体味は落ちてくる、味が落ちてもブランドイメージが味覚をカバーするので売れ続ける、という奇妙な現象が起きる。ぼくが好きで通ってるフレンチレストランがある、ミシュランには載っていないがとても美味しい。もし、そこがミシュランガイドに掲載されたら大変なことになるだろう。ぼくが好きで通っていた美味しいかつ屋があったがミシュランガイドに掲載され、そこの奥さんはちっとも嬉しそうではなかった、お客が急に増えて大変そうだった。それと関係あるのかは知らないが、去年閉店した。

有名になると難しい、自分のペースを保てなくなるから。お金も増えるけど疲労も増す。ちやほやされる、色んな人が来る、誘惑も増える、ともすると本人も勘違いする、冷静さを欠いてくる。無名がいい、でも無名だと食えない。だからその中間がいいのだが、中間にも上から下まで程度があり、丁度いい中間にポジションを保つのは至難。

無名の中にも秀逸なものはあるし、有名の中にも俗悪なものはある、名前の有無は相対的なものでしかない。結局頼みに出来るのは自分の感覚だけだと思う。