(12/7の記事の続き)それから数日の間僕は朝下の階に降りる度にマシューの部屋のドアを見た、ドアは破れたままでドアノブ大の穴からは向こうが見えていた。僕は内心思った、なんてバカな奴なんだ後先のこと考えずにドアを蹴破り部屋に鍵もかけられない、しかも修理するのにどれだけお金が掛かるのだろうか、ドアを買って鍵を付けて、、。事件から四日後だったか、下でマシューに会ったので、ドアはどうなったの、と訊いてみた、ドアは買ってもう部屋にあるよ、と言う、中に入れと手招きする、部屋の奥を見ると梱包された巨大なドアが横に立て掛けてある。鍵は、と訊くと、鍵はアマゾンで買ったよ、幾らだったの高かったでしょうドアは、ドアはね送料込みで50ポンド鍵も十数ポンドだったよ。彼は鍵のキットも見せてくれた、ドアはDIYのチェーン店で買えば安いらしい。ドアノブも前の物よりコンパクトでモダンだ。で、どうやって付けるの、難しくない、自分で今日やるよ。その日の夕方帰るとドアはもう綺麗に付いてスムーズに開閉出来る様をマシューは見せてくれた。その後彼はノミを上手に使いこなしながら鍵穴の受け部分も上手に削り金具を取り付け、ドアにドアノブのシリンダーを付ける為の円形の穴も開け、夜には全ては終わっていた。円形の穴を一発で開ける円形のノコギリを使わずに手作業でやったのでドアノブの周りには穴がはみ出して少し見えていたが、僕はパテで埋めればいいんじゃない、と言った。それを除けば完璧だった、しかも掛かった費用は一万円余り。ちょっとした大工さん並みの作業をやってのけた、鍵のシリンダーをドアに埋め込む作業は難しいように見えた。キッチンでマシューが作ってくれた牛肉入り焼き飯を食べながら少し質問した、彼はロンドンでシェフとして働いている。兄弟は自分も入れて十二人いる、上の姉は大きくなると叔母さんに預けられ、一緒に暮らした年数は短く、自分も母と暮らしたのは十年だ、来週四ヶ月ブラジルに帰るが帰ったら父の仕事を手伝いにアマゾンにボートで行く、アマゾンは車じゃ無理だから。この一日で彼に対する見方は急変した、日本なら戦前生まれの人間のような生活力に思えた。ドアを蹴破りこうやって自分でケリをつけてしまうところ、僕には到底無理に思えた、ボートでアマゾンに行くのもゴキブリや虫が嫌いな僕にはハードルが高い。次の日の朝ローラがキッチンのスポンジケーキを指差しマシューが焼いたけど食べない、と言う、それを一切れ切って部屋に持って行き僕は複雑な思いで食べた。ケーキも焼けるのか、ドアも取り付け、アマゾンに行き、、。
流石ブラジル凄いな、サッカー強い訳だ、ドアを蹴破って、マシューもサッカーをしている、あの重いドアを取り付け穴を開け、次の日ケーキ焼いて、帰ったらアマゾンに行くってか。全ては僕には無理。最後の日マシューとWhatsApp(Lineのようなもの)交換をした。日本の和菓子を一つあげたらそれをナイフで薄く切って一切れずつ綺麗に食べていたのが印象的だった。
(昨日から店やってます)
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