仕入れの旅も二週目に入った、少しスローダウンしてのんびりやろうと思う。余り飛ばすとお金も体力も最後まで保たない、何処かでオフの日を作らないと長い仕入れは続かない。仕入れは前のめりにならないこと、気持ちが焦ると買わなくてもいい物を買ったり微妙な物に手を出したりする、詰まりミスをする。
今日は仕入れの後友人の家でランチを食べた、ノルウェーの魚の燻製にドイツのライブレッド、それにドイツのドライワイン。僕の友人Kは英語が母国語だが他にスペイン語、オランダ語、ノルウェー語、フランス語を話す、奥さんは中米出身なのでスペイン語を、オランダに若い頃住んでいたのでオランダ語を、ノルウェーに友人がいてよくノルウェーに行くのでノルウェー語を、フランスに別荘があるのでフランス語を話す。そうやって五つの言語を使い分けヨーロッパを股にかけ色々仕入れて来る。僕の店にあるノルウェー製のアンティークのエナメルブローチやフランスの風変わりなバカラグラス、旧東ドイツの陶磁器などが偶にあるのも彼の語学力に負っているということになる。彼はヨーロッパ諸国のお酒や料理にとても詳しい、何時も色んな国のお酒を片手にこの五つの言葉の何れかを話している、あるときはライプツィヒで、またあるときはオスロで、または北極圏近くで釣りをしながら。と、書いていくと彼は詩人のようだ、少なくとも自由人ではある。彼にとってはお金よりも人生を楽しむことが重要なようだ、アンティークもその一部に過ぎないのかもしれないが、アンティークを求めて彼はヨーロッパの色んな街に出掛けて行く。
アンティークの仕事を長くやっていると大抵の人はアンティークの垢とお金にまみれて薄汚れていく、それを貫禄のように言う人もいるが、それはとんでもない間違いで、矢張り汚れずにいられるなら出来るだけキレイなほうがいい。アンティークは人の死を超えて百年単位の時間で動いていく、そこに束の間に関わるのが僕らの仕事だ。それ以上ではないのだ。アンティークの運命に若干の関与を許されているのであって、長い目で見れば別に「所有している」訳でもない。
アンティークの側から見れば僕の店も一時的な「止まり木」のようなものだろう、そう思うと見えかたも変わってくるから面白い。
0コメント