フランスの画家によるエッチング、70年代、額はオーダーで作って貰った(32,5 x 38 cm)、馬に乗った男を見送る裸の女、その左にいる黒猫。僕がこの版画を仕入れたのはこの黒猫がいたから。黒猫がいるのといないのでは、この版画の印象は随分と変わる。ただ、裸の女が馬上の裸の男を見送っているだけなら別に面白くもない、そこに猫が介入してくるから面白いのだ。猫の視点からこの版画を観ることも出来る。それでストーリーに膨らみが出来る。額も素敵に仕上がったので満足している。
何か今日は気力がない、暑さが戻ったせいか本を読んでても続かない。イギリス文化史の本を少し読んだ、イギリス人が何故傘をささないかの歴史的背景について。19世紀イギリスでは傘を所有しているか否かも階級と関係があった。昔は上流階級の人は馬車を所有していて長距離を歩かずに馬車で移動出来たので傘を持たなかったそうだ。上流階級の人は傘の代わりにステッキを手にして歩いた。彼らはたとえ傘を持っていたとしても、細身の上等な傘は彼らのステータスシンボルなので、余りさしたりはしなかったらしい。確かにイギリス人は傘を余りささない、その影響か僕も余り傘をささない。それとイギリスの雨粒は日本と違って多少霧のように細いのだ、それもイギリス人が傘をささないことと関係あると思う。だから、帽子とコートがあれば多少の雨は防げるのだ。イギリス人は身体の大きな人でも小さな車に乗ってる人が少なくない、マニュアル車に乗ってる人もまだ半数位はいる。最近のイギリス人は紅茶を飲まない、コーヒーを飲む人が多い、でも、元々イギリスはコーヒー文化だったので元に戻っただけなのかもしれない。大体日本人が想像してるように丁寧に紅茶を淹れて飲んでるイギリス人なんて何処にいるのだろうというくらい少ない、と思う。それでも、マグカップにティーバッグ突っ込んでお湯入れてたっぷりのミルク加えて飲むティーは美味しい。イギリス人は日本人に比べたら「食」に対する執着は弱い気がするし、ビールだってアイルランドのほうが断然美味しい。階級でも食べている物、舌が違う。これは向こうに住まないと分からないと思う。日本人が言う「義理人情」に当たるのがイギリス人の言う「フレンドシップ」だと思う、イギリス人は「フレンドシップ」が好きだ。だから仲良くなると結構義理堅い。日本とイギリス、島国故の共通点は多いように思う。
イギリスの食べ物は不味いですよね、と言う人がいる。最近のイギリスは結構美味しい、でも僕が思うのは、日本と比べて「不味い」と片付けてしまうのは違う、フェアーじゃないと思う。もっとその国の文化全体の中で「食」の占める位置を考えないと、単に、どっちが美味い、みたいな比べかたは無意味だろう。イギリス人の中には食の快楽を肯定出来ないでいる倫理的な感覚が未だ潜んでいる気がする。フランス人とはこの点で大きく異なる。イギリス人が好む生活のシンプルさと快楽否定の感覚は繋がっていると思う。だから、イギリス人がデカダントなほうに振れると余計タチが悪い気もする。要するにイギリス人は「むっつり」屋なのだ。日本人はこの点ではフランス人に近いだろう。
僕は、美味しいチーズとパン、パスタとワイン、コーヒーにチョコ、これだけあれば暮らせると思う。
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