Andy Sheppard Quartet.

“Andy Sheppard Quartet.”のCD、’Romaria’ 、レーベルはECM、クァルテットの編成はサクソフォーン、ギター、ダブルバス、ドラム。2018年に出たもの、ECMのCDはクラシックとジャズで沢山持ってはいるが、昔出たのと違って最近のECMはハズレもある、でもこれはとても良い。夏の夕暮れに一人聴くには持ってこいの音楽だ。夜のドライブにも良いかもしれない。ジャンルで言えばモダンジャズなのだろうか、イージーリスニングみたいな聴き易い音楽だが、浅い音楽では決してない、夏の夜に感じる物悲しさに沿うような素敵な音だ。クァルテットの編成がちょっと変わってるのも良いし、ソプラノサックスの音も良い。

今日は昼間ちょっと頭が痛くて風邪気味だったが横になったりお茶飲んだりしてるうちに回復、夕方短いエッセイを一つ書いたので今日の「仕事」は終えた。「一日一エッセイ」が目標なので今日は合格。ソプラノサックスの音を生で初めて聴いたのは二十代のダブリンに住んでいた頃、グラフトンストリートでギターの伴奏でソプラノサックスを吹いていたスティーブに出会ったとき。それから彼らがパブで演奏するのを時々聴きに行った、とても渋い演奏をしてるのに当時のダブリンはモダンジャズを聴く土壌はまだ無く、皆んなスティーブの演奏する「ドルフィンダンス」なんかお構いなしにギャーギャー騒いでいるだけ。スティーブはヨークシャ出身のイギリス人でアイリッシュミュージックをやりにダブリンに来ていた。お父さんがスティーブが小さい頃から精神病院を出たり入ったりで家は何時も暗く、イギリスには帰りたくないと言っていた。スティーブも僕もお金には縁がなく、ある日スティーブの家にいたら彼のお母さんがイギリスからフェリーに乗って彼を訪ねて来てて、隣りの部屋から二人のやり取りが聞こえてきて、お母さんが息子に、ほら、これ二十ポンド、取っときなさい、と言いながらスティーブが、要らないって、と何度も押し問答するのを僕は、とても聞いてはいけないものを聞いてるようで恥ずかしく思ったのを未だ覚えている。他にもセーターとかお母さんが持って来てスティーブに渡していて、本当に切なかった。

今頃どうしているだろうか彼は。未だ音楽やっているだろうか、それとも普通のお父さんになっているだろうか、それはそれで良いことだ。会いたいと思うけど僕は彼のファーストネームしか知らない。今でも彼の赤毛とそばかすと青い眼は覚えている。