リチャード・ブローティガンと葛西善蔵

読みかけの本が二冊、偶々仲良くソファーの上に並んでいて、R・ブローティガンと葛西善蔵、ブローティガンのこの本(“So the wind won’t blow it all away.”)は大好きで僕にしては珍しく読了した洋書なのだが、葛西善蔵のこの文庫は「湖畔手記」が読みたくて最近買った。旺文社文庫、初版昭和51年。この作家は河盛好蔵の評論を読んでいたら「湖畔手記」のことが出てきて読みたくなり取り寄せた次第。

葛西とブローティガン、同時代ではない、葛西は明治生まれなので彼のほうが古い、のだがこの二人の作家に同じ匂いを感じて面白いのだ。素晴らしい作家だが私生活はどうしようもなく大変、簡単に言うと破滅型、ご存知のようにブローティガンはピストル自殺しているし、葛西も若くして病死している。友人として近くにいたら大変なタイプだろうが、物書きとしては素晴らしい。葛西善蔵なんて今の人は余り読まないだろう、精々、太宰や安吾止まりではないだろうか。講談社文芸文庫辺りからは本が出ているかもしれないが、本をそれなりに読む人でないと手には取らない作家だろう。ブローティガンの「芝生の復讐」も新潮文庫で簡単に買えるのに意外と皆んな知らない。素晴らしい本だし藤本和子さんの訳もとても良い。彼女はブローティガンと交流のあった在アメリカの作家だ。ブローティガンのとても風変わりな英語を日本語に訳せるのは藤本さん以外いないと思う。彼は所謂「インテリ」ではない、高学歴でもない、確か母子家庭で貧しく、父親が変わる度に義父に虐待を受けて育ったような人だ。彼の文章は独特、誰にも真似出来ないと思う、とても不思議な世界を書ける人。彼が大学に行ってたらあんな文章は絶対書けなかっただろう、教育というものに汚されていないのだ。日本にも少しの間住んでいた。確か谷川俊太郎辺りと交流があった筈だ。僕は個人的趣味の問題だが谷川さんより、まどみちおさんが好きだ。まどさんは好きな画家は誰ですか、と訊かれてセルジュ・ポリアコフ、と答えている。ポリアコフは僕も昔からとても気になってる画家だ。富山の美術館が収蔵してるのにお蔵入りで観られない。残念。

兎に角話しは飛んだがこの二人の作家、何処かで手に取って読まれてみて下さい。「芝生の復讐」素晴らしいです。