「回想の本棚」河盛好蔵 著(中公文庫)

最近ずっとこの本を読んでいる、河盛好蔵の「回想の本棚」。近代日本文学について書かれたこれだけ楽しませてくれる本は中々ないと思う。彼の批評は深く且つ正確である、それと色んな文学者のエピソードが夜空の星を眺めるごとく出てきてこんなに楽しい本はない。もう一つ彼の文章は無駄に難しいところが全くなく読み易い、これはとても大切なことだ。斎藤緑雨、広津和郎、葛西善蔵、島崎藤村、伊藤整など明治以降の色んな作家が出てきてこんな小さな文庫でここまで濃密に楽しめる本は少ないと思う。新刊で今も出ているかは知らないが古本では買えると思う。

昔の作家の世界に慣れると今の作家の本は読めなくなる、シングルモルトの濃密なウイスキーをストレートかロックで飲むのに慣れた人がコンビニで売ってる缶入りのサントリーウイスキーの水割りを飲まされるような、それくらいの違い、落差があると思う。僕ももう歳なので残された時間を考えるとそういう薄っぺらなものには興味がないし時間も勿体無い。深く濃いものに囲まれて余生を過ごしたいと思う。アンティークも同じで深まっていくことが楽しいのだ。濃密な人生、これが僕の目指すところだ。