八角形の塩入れ

八角形のガラスの塩入れ(7,4 x 5,8 cm)、イギリス製、1820年頃。とても珍しい形です、本来は二客セットで使われていた物でしょうが、一客でも十分に存在感があります。とてもカッコいい物です。縦と横のバランスもいい。上品な布でも敷いて飾ったら最高です。

知り合いのバーのマダムが亡くなりました、僕の店が前の場所にあった頃、彼女の通勤路だったので映画好きの彼女と良く店の前で最近観た映画の話などをしていました。まだ七十前の若さでした、独り暮らしの方でお元気だったので最初は若しやとも思いましたが、どうやら孤独死だったそうです。突然自宅で倒れ恐らく苦しむことなくそのまま亡くなられたらしく、、。

考えようでは人の死にかたとしてはそう悪くないように思えます、噂ではご自身も、自分は一人で死ぬ、と仰っていたそうで。苦しむこともなく死に際もその自覚もなく終わる人生。竹を割ったような潔い性格の方だったので、ヨーロッパの名画が好きな彼女には、彼女らしい「退場」の仕方だった気もします。ご冥福をお祈りします、Aさん。まだご自分が亡くなられたという自覚が無く、魂が少し戸惑っでおられるかもしれませんが安らかにお過ごし下さい。

人は何時かはまた一人に戻るのですから、寂しい気もしますが、そうやって一人で生まれて来てまた元の一人に戻る。ただ、この世に怨みや怒りなどを残さず、苦しむことなく死んだのなら、その後もそう苦しまずに過ごせるのではないか、そんなふうに思うのです。僕、よくテレビとかで見る、大きなお葬式が嫌いなんです、特に政治家とかの。沢山のお花に囲まれた棺、喪服姿で集まった神妙な人々、特にあの権力を誇示したような花の飾り。どんなに悪い奴でも死んだら誰も悪く言わない。死んでも悪い奴は悪い、だから悪く言えばいい、と僕は思います。それが死んだ途端に盛大な花に囲まれて多くの人が粛々と集まる。Why did you come here to this funeral? ですよ、なんの為にあなたは此処に来たの?

昔父が死んだとき僕は喪主でしたが、お葬式で色んな人と余りにも大声で喋り過ぎて、母に、あんた、少しは悲しい感じにせんと、と言われました。悲しかったんですよ、ただ、なんかそのときはハイで、喋り過ぎた。まあそんな感じでしたね。