不思議な絵

今回の仕入れでロンドンの友人の家に泊めて貰ったときのこと、次の日が早いので十時前にはベッドに就き、ふと上を見るとこの不思議な絵が僕を見下ろすように掛かっている。女性の顔を描いているのだが、眼も鼻も朧ろで口だけが描かれている何処か不気味にも見える絵。とても印象深い絵。

次の日友人にこの絵について訊いた。この絵を描いた男性は彼が昔オランダに住んでいたときに親しくしていて、このオランダ人は子供の頃、戦時中インドネシアの日本軍捕虜収容所に両親と共に収容されていたらしく、その後オランダに戻ってからこのような風変わりな絵を描き続けていたのだが自分の絵を決して売ったりせず極親しい人にだけあげていた。僕の友人はどうにか頼み込んでこの絵を一枚彼から貰い受け手に入れた。

友人に僕は彼の名前を訊いた、彼の名前は「フェルメール」。

不思議なくらい上手く出来た話しで恐いくらい。でも実際にあった話し。

僕は後でこの絵に手を合わせ小さい声で一回だけお経をあげた。成仏して欲しい。

日本軍、捕虜収容所、フェルメール。