午前四時のバス

ロンドンのWaterloo駅から始発電車に乗るのに近くのバス停からバスを乗り継いで行く、午前四時。途中バスの連絡が悪く極寒の中バス停で二十分待たされる。どうやらバス停前では他の車は停車出来ないようで手を挙げて合図してもタクシーは通り過ぎて行く。電車も乗り換えがあり、結局目的地近くの駅に着くのに二時間掛かった。今日はロンドン近郊のアンティークディーラーが皆集まるフェアーに行ったのだが、僕はこういう競争が激しく大勢の飢えた野獣が獲物にたかるようなアンティークフェアーはどちらかと言うと嫌いだ。疲れるし、大男達が一つのテーブルを囲んで「獲物」を奪い合ってるのを後ろから見るとどうもシラけてしまう。それに幾らプロでもそういう時は他人に奪われまいと案外冷静さを失い買わなくていい物に手を出すものだ。それより、大きなフェアー会場の端っこにポツっと暇そうに立っているディーラーが並べてある中から一人吟味してゆっくり買うほうが好きだ。拾い物は意外と端っこにあったりもするのだ。後僕の場合直感で嫌いなディーラーからは買わない、矢張り物は良い人から買いたい。下を向いてテーブルに並んだアンティークを見ているときにそのテーブルの主が誰かと喋っていて、あぁこの人の声嫌いだな、悪い人の声だ、と直感的に思い、サッとテーブルを離れるときもある。声が嫌い、喋り方が嫌い。去り際にそいつの顔を覗いて、この顔ね、、矢張り嫌い、悪い顔、と思う。僕は正直な人から仕入れた物を日本に持ち帰り自分の店に並べたいのだ。悪い奴がその手で触った物にはきっと何か良くないものが付いているものだ、ただ眼では見えないだけのこと。

写真は午前四時前の交差点。まだ真っ暗だ。