映画「福田村事件」を観て。

先日休みの日にシネモンドで映画「福田村事件」を観ました。ドキュメンタリー映画で有名な森達也監督の映画ですが、最初にポスターを見たときにそれが美しくて興味を持ちました。とても静謐な感じのポスターで、もしかしたらいい映画かも、と思ったのです。1923年の関東大震災直後に千葉県福田村で実際に起きた虐殺事件を題材にしています。香川県から来た被差別部落出身の行商の一行が朝鮮人と間違われ村の自警団員に殺されます。この映画は、部落問題、朝鮮人差別、当時の政府による社会主義弾圧などを扱っていますが、よくあるような社会問題を扱った映画とは一線を画しています、先ず映像がとても美しい。ディテールの一つひとつに意味があり、映画が進むに連れて殺戮場面のクライマックスに向かいながらその無数のディテールの重なりがポリフォニック(多声的)な効果を生んでいます。ディテール一つひとつも美しいし、でもそのディテールにはしっかりと意味があり、映画を観ながらそれらが自分の中で重なっていき、最後にその深い多声的な響きに感動させられるのです。

俳優さんたちの演技も素晴らしく、まさに演じているというより、その中で生きているような迫真の演技でした。日本の映画史に残る映画と言ってもいいと思います。僕は、昔の日本映画を除けばこんなに日本映画を観て心打たれたのは初めてです、日本映画捨てたもんじゃないな、と本当に思いました。マーティン・スコセッシの「沈黙」観ても感動はそのときだけでそんなに深く打たれることはありませんが森達也さんのこの映画は凄いです、深いです。とても力がある。映画が終わってそこにいた人は誰も動けませんでした、それだけ打ちのめされ皆んな動けなかった。僕もショックで茫然として一人パンフ抱えて近くのミスドーでコーヒー飲みながらパンフ読み耽っていました。

皆さん近場の上映映画館見つけて行かれて下さい!ただ、とても体力を要する映画です。部落問題、朝鮮人差別、社会主義弾圧など近代日本のタブーに斬り込みながらこんなにも深く美しい映画が作れたことがとても稀有だと思います。これに出演された俳優さんも偉いなと思います。日本映画見直しました。