1900年頃の脚が特徴的なグラス

イギリス、1900年頃のグラス(10,3 x 5,5 cm)、脚(foot)部分の端が少し分厚くなっています。これは元々18世紀後半のイギリスのグラスに時々見られる、’folded foot’ という名の、テーブルに置いたときにガラスが欠け難いよう円周部を折って二重にした技法の、真似、というかそれに似せた作りのグラスです。これは殆どデザイン化されている感じですがね。ボール底部とフット中央にカットが入り、ガラス生地も良く、とてもキュートで一見地味ですが珍しいグラスです。

11月の20日過ぎからイギリスに三週間ほど仕入れに行く予定です。今回は余り気が乗らないというか、円も安いし、そんなに売れないし、イギリスの経済状況も悪いし、先行き不安定だし、とマイナス要因多い中、中々自分を買い付けモードに持って行くことが出来ないでいたのですが、考えを変えて「イギリスの友人に会いに行く」イメージで渡英することにしました。アンティーク買いに行く、というより、友人たちと交流を深めに行く、という考えですね。仕入れる量も少し減らす、というか、量より質優先で買い付けて来たいと思っています。僕自身金沢に年中いると煮詰まっちゃう、というか時々エスケープしないと無理なので、イギリスに行くのは良いのですが、世界情勢とかイギリスの社会情勢を考えると、何か何処か気が乗らない自分がいる、んです。先日、東京の泉屋博古館で隠遁をテーマにした素晴らしい展覧会が開かれていたのですが、本当に隠遁したいくらいの気分に時々襲われます。まあ店も至って暇だし消極的隠遁生活みたいなものですが、隠遁とは本来極めて能動的選択な訳で、とても強い意志を伴うものでしょう。静かに暮らしたい、世俗的なことは出来るだけ減らして、精神的に蜜に暮らしたい。それがぼくの希望ですね。泉屋博古館で観た富岡鉄斎が八十八歳で描いた水墨画、素晴らしいの一言でした。己が人生を燃え尽くすように作品が昇華していく、彼のような芸術家はそう多くはいないと思います。この展覧会とても素晴らしいです。是非お越し下さい。展示企画の全体の構成もバランス良く、意外性(ある種のユーモア)もあり素晴らしいです。古典だけに敢えて収まらずその中に現代を取り込んでいく意志も感じられ好感が持てました。