小さな貝殻の形のシルバーケース

貝殻の形をしたシルバーケース(長さ 5,0 cm、高さ 2,3 cm)、そう古くないでしょう。20世紀初頭頃か、フランスの物かもしれません。素材はシルバーで内側は金メッキがしてあります。クリックでカチッと閉まるように作られています。元々の用途は女性用の嗅ぎタバコ入れでしょうか。珍しい物です、イギリスの友人から仕入れました。

春のせいか眠いですね、本を読んでいても直ぐ眠くなる。「小林勇文集」(全十一巻)を買いました、少し前に彼の小説「隠者の焰」を読み、彼の書いたものを色々他にも読みたくなり取り寄せました。箱に入った綺麗な装丁の本でパラフィン紙がかけられてあり、月報と新刊案内の冊子が綺麗なまま挟んであり、どうやら僕が最初の読者のようで、本が始めて開かれるときの新しさがまだ有り、微かに新鮮です。月報を読むのも全集ならではの楽しみですね。この全集のような本を開いて一人ゆっくり机で読むとき読書の醍醐味を感じずにはいられません。彼の小説「隠者の焰」の中に「夢」という、老齢の名歌舞伎役者と骨董商との触れ合いをお茶屋を舞台に描いた短編があり、それに自分はいたく感じ入ったのです。歳がいくと人間読める本が自然少なくなっていきますし、歳がいかないと分からない本もあります。人の感情の機微、人生の不可思議さ、人の心の哀しさ、そんなものが分からないうちに本読んだところで何の意味は無い。味わえなければ読んでも仕方ない。言葉が自分の中に沁みてこなければ読んだとは言えない。

ビブリオバトル、という変な言葉があるようですが、本は競う為に読むもんじゃない。読書は何処までも個人的なものでそれに優劣をつけるなんて馬鹿げたこと。本を沢山読んでいることも自慢にはならないし、沢山読んだからといって賢くなる訳でもない、読書バカも世の中には沢山いる。

皆さん、スペースは要りますが好きな作家の全集を買うのも良いですよ、きっと読書の質が変わりますから。幸か不幸か大抵の全集は今安く手に入りますしね。