イギリスに着きました。


ロンドンに着きました。フライトがウクライナ情勢で以前より長く十四時間近く、そこからタクシーで常宿まで二時間近く。疲れました。夕暮れのロンドン郊外、タクシーから見える通りは、何時も見慣れた光景よりも更に寂しく感じられ、多くの店が廃業閉店で暗く、通り沿いの住宅も電気代の大幅な高騰で可成り節約しているのか電気が点いている部屋が少なく、兎に角暗い。その暗い通りを俯き加減の男がポケットに手を突っ込み歩いている。僕が二十代のときに住んでいたダブリンの光景が重なります。あの頃のアイルランドも失業率が二十パーセント近くで街は暗かった。こんなロンドン郊外の通りを見てても、今現在この国が余り機能していないのが見て取れます。何時までこんな風に日本からイギリスにやって来て仕入れが出来るのか、そんな不安も濃く過ぎります。こんな時代の中で海外に行き骨董を仕入れるなんて、愚行に思えるくらい、逆風下もいいとこです。まあここまで来たら、イギリス・アンティークと心中するくらいの覚悟が必要ですね。勿論、フランスやオランダなどに出かけて行き仕入れることもあるでしょう、恐らく。でも僕はイギリス18世紀が大好きですし、他の国でその時代の物をしっかり仕入れるのはこれはこれでまた十年以上の時間を要します。もう、何処の国でも骨董と言うものとしっかり向き合って生きてきた種族が絶滅してるんですよ、きっと。日本でもそうじゃ無いですか、骨董を商うこと自体が軽くてオシャレなことになって来た。それを商う人も物も「薄く軽く」なった。あと、物に関して言えば、ぱっと見の印象で売れてる感じもするけれど、骨董の場合、一瞬の印象は当てにならないことも多いのです。

今回僕は六冊の本を持って来ました、「密林の語り部」バルガス=リョサ 著(岩波文庫)、「エリア随筆抄」 チャールズ・ラム 著(岩波文庫)、「深き淵よりの嘆息」 ド・クインシー 著(岩波文庫)、「一言芳談」 小西甚一 校注(ちくま学芸文庫)、「エスター・カーン」アーサー・シモンズ 著(平凡社ライブラリー)、「象徴主義の文学運動」 アーサー・シモンズ 著(富山房百科文庫)。僕はこの六冊のセレクトが気に入ってます。自分がこれから進んで行く方向をこれらが端的に現している気がしているからです。やっとこの歳になって、自分の読書が出来るようになったかな、と感じています。ド・クインシーやチャールズ・ラムに対しては説明不可の郷愁すら覚えます。まあ持って行くだけでこれらの本をどれくらい読むのかは怪しい限りですが、暇は沢山ありそうなので精々カフェに籠りたいと思います。これから一ヶ月、古い物を沢山見て勉強したいと思います。買って仕入れる、と言うよりも先ずは沢山見て触れて勉強ですね。沢山見る中で仕入れられたらそれが一番良いですね。余り買い過ぎないよう気を付けないといけません。

これから約一ヶ月時々記事を書いて行きます。どんな風になるのか自分でも分かりませんが、まあ前回よりは明るいものにしたいです。写真も良いのを撮りたいですね。

(写真は金沢の中村記念美術館から県立美術館へと行く遊歩道)