美しいスナフ・ボックス(snuff box)

イギリス19世紀初頭の嗅ぎタバコ入れの小箱(タテ、ヨコ、高さ、4,6 x 8,4 x 3.3 cm)。とても美しい箱です。銅中心のアロイ(合金)で作られていて、表面にメッキが施されているのですが、全体として金属の種類が良く分かりません。金工に詳しい人に見せて意見を訊こうと思っています。ベースの金属はシルバーでもない、真鍮でもピューターでもない、恐らく銅のアロイだと思うのですが余り自信ないです。表面全体に鉋(かんな)目のような彫り模様が細かく入っていて、光が当たると全体としてモワーっと柔らかい光を放ち独特の言い様ない美しさを見せてくれます。こんな箱今まで見たことないです。1800年前後のイギリスの小箱には魅力的な物が時にありますが、これは正にそれですね。この時代の小箱はヒンジ(hinge)がとても美しいのも魅力です。19世紀半ばになってくるとこんな美しいヒンジを作れる職人はいなくなります。ヒンジが素晴らしい小箱はそっと閉めるときの感触が堪らないのです。閉めるときに箱の中の空気がフッと柔らかく吐き出されるんですね、その感触が良いんですね本当に。箱はフランスよりイギリスの物のほうが見えない部分にきちんと手が掛かってて、それが全体としてとても端正な印象を与えてくれます。

ラ・ロシュフコーの「箴言と考察」(岩波文庫、1957年改版)にある言葉。

「われわれの友情がこんなにも変わりやすいのは、魂の質を知ることがむつかしくて、精神の質を知ることがたやすいからである」(箴言 80)

今のぼくにとても響いてくる言葉です。