1800年頃のグラスに見えますが。

このグラス(15.5 x 6.8 cm)、初めてガラス越しに見たとき1800年頃のイギリスのグラスかなと思いました。でも、ガラス板を開けて手に取るとガラスの質感も違うし思ったより手に持つと軽い。1900年頃に1770〜1800年のスタイルで作られたグラスです。とても良く出来ていてカットとグラヴィールの質も高く、一見騙されそうです。強いて言えば、フット(脚)の部分が古い物ならもっと厚みがあります。手に持つと1800年頃のグラスはもっと重厚な感じですね。でも良く作られた高級グラスです。脚のリムに施されたカットも良いですね。これも昔のにそっくり作られています。職人さんが、俺たちだって作ろうと思えば昔の職人に負けないくらいの技術があるんだぞ、って意気込んで作ったのでしょうか、、。アンティークグラスは何せ透明なので、写真は勿論のこと、ガラス一枚挟んでいると目の前で見ていても何時の時代の物かはっきりしないことが時々あります。それから、箱でもカップでも皿でもそうなんですが、裏側の表情に真贋は良く現れます。裏は中々騙せないんですよ表は騙せても。裏を取り繕うのは難しいのです。

夏になったのでジャズばかり聴いています。自分は特にジャズ・ギターが好きです。タル・ファーローのギターにエディ・コスタのピアノのトリオなんか最高です。しかしこの50、60年代の二十代は早熟というのか、何でこんな粋な演奏というか成熟した音が出るんですかね。ビル・エヴァンスなんかよりぼくはエディ・コスタの気迫満ちた迫り来る独特のタッチが好きです。エディ・コスタのピアノは知らないで聴いてても直ぐ分かります。本当に唯一無二のピアニストですから。最近知った昔のギタリストでハーブ・エリス(Herb Ellis)がいます。レイ・ブラウンのベース、スタン・ゲッツのサクソフォーンと演奏してるのを聴いてとても印象に残りました。

ジャズもクラシックも50年代から60年代にかけて、録音技術がモノラルからステレオに移行していく時期が面白い気がします。ハード面の技術が進化すると逆にソフトの質は低下する。この60年前後はジャズもクラシックも黄金期ですよね。全然違うけどこの時代は腕時計や車もデザインが素晴らしい。今のロレックスやオメガは欲しくないけどこの時代の物は素敵です。本なんかもデザインも内容も濃さと斬新さ、勢いがあり面白い。50年代から80年代に掛けての数十年は文化的にも一つのピークですね。それが90年代に入ると萎縮していく。90年頃の本でも読んでると、いやっこれ今はこんなこと言えないよな、、というのが沢山書いてあります。ほんの三十年前ですがまだ今から見れば自由に物が言えたんですね。今は、表現、創作しようと思っても本当に難しい時代だと思います。ちょっとしたことで、差別だハラスメントだと騒がれかねません。人を指導する教えるのも難しいですね、傷ついた、と言われてしまうと何も出来ない。良いもの面白いものクオリティの高いものを作るときって真剣ですから、ほぼ絶対に誰かを傷つけてしまうことになります。キツいことも言わなければなりません。真剣で戦うようなものですよ。一歩間違えば切れちゃいますから。作る、ってそんなもんです。だからそれを観賞する人が感動する心動かされるんです。ただ思うのは、矢張り怒るにしてもベースに愛情、思い遣る心がないといけない、ただ怒ってはまずいでしょう。でもね、それでも矢張り人を傷付けながら進んでいくしかないんです。良いもの作るってある意味残酷なんです。