1820年頃のカットグラスの鉢

1810〜20年頃のカットグラスの鉢(24.5 x 7.0 cm)、勿論イギリス製、でなければアイルランドで作られた物です。この独特のシルバー色の硬質の輝きはこの時代以降のカットグラスにはないですし、この時代より前だとこんな深い鋭角の鋭いカットはないですね。そういう点では1800〜20年頃のカットグラスには特有の魅力があります。ヴィクトリア時代が始まる少し前の二十年ほどの短い間です。

「そらあるき 臨時号」を先日東京のジュンク堂書店池袋本店に納品しました。もう書棚に並んでると思います。東京近郊の方はここでご購入下さい。後、書店の「Title(タイトル)」にも置いて貰っていると思います。

先日zoomを使って「そらあるき」の編集会議をしました。そこで僕はこれからの展望、方針などについて少し話しました。今回の「そらあるき」はエッセーと書評と写真で構成されています。全体としてまあまあの出来かな、とは思っていますが、この三つのものの組み合わせは別に何も新しいものではありません。何も新しくはないのですこの「そらあるき 臨時号」は。僕が編集長として目指したい作りたいものは、もっと新しい何かなんです。料理で言えば、みんなが当たり前に知っている普通の食材を使って作る今迄ありそうで無かった不思議なレシピー。シンプルなものの絶妙な組み合わせで出来る新しく刺激的なもの。でも、本当に新しいものって、一見新しくは見えない、見たところ普通なんです。そのものの中にある新奇性を発見するにも一定の下地がないといけない。分かりにくいんです。誰にでも分かる新しさというのは必ず大衆に媚びていますからつまんないんです。分かりやすいもの作っても僕は 全くつまんないですから。

例えば、音楽でも文章でも、幾つかの要素が重なることで出来る領野があり、それが有ることで初めてそこに美しさが宿れる。その空いたとこに一瞬何かが訪れ、それを僕たちは美しいと感じる。それはとても壊れ易いものだけど稀にその景色が持続することがある、複数の蝶が戯れながらゆっくり過ぎて行くかのように。

ただそういう領野の在処も一定の訓練のようなものを経てからでないと観えてこない、ということなんです。きっと。