特にニュースはないですが、何となくの更新です。今の新しい店は裏通りにあり店の中に一人居ると一日中殆ど誰にも会わないようなこともあり、店が終わると街の雑踏を求めてふらりと外へ出かけたりします。何か一日の中にアクセントが欲しいんですね。今日も店が終わり街中の本屋で中村哲さんの「アフガニスタンの診療所から」(ちくま文庫)を買い求め香林坊のミスドーで読書。買ったばかりの本を読み始めるも、数ページ読み進めると、こんな本はもっと静かな場所で読まないとしっかりと頭に入らないな、と思い直し新聞でも読みながらドーナツとコーヒーでひとときを過ごす。
もう何年も前の冬のこと、その日も寒い日で朝早く香林坊のミスドーに行くと店の前で、時々見かけるホームレスの男性が店の外に掛けてある大きなメニュー表とジッと睨めっこしてるんですね。もう詳細は忘れたのですが、彼はそのメニュー広告を見ながらドーナツを食べるかコーヒーを飲むかのどちらにするか寒い中立って考えていたようでした。そのメニューの前で酷く迷っている様子は何となくこちらにも伝わって来て、やっと中に入ると彼はコーヒーだけを注文してました。30台位の人でしたかね、本当はドーナツとコーヒーを食べたかっただろうに、と僕は思いながらも、僕がドーナツを奢りますよ、と言い出す勇気もなくただ観察する冷たい自分。その後彼はコーヒーを何杯も何杯もお代わりして隅っこの席で粘ってました。ただ、見てて哀れに感じたのがお代わりを注ぎに来る女の子に対してとても横柄に振舞っていたんですね。やけに威張った命令口調でお代わりを頼むんです。それを見てると何かこちらまで悲しくなって来て。バイトの子の気持ち、その男性が横柄に振舞ってしまう恐らくの理由、彼の前にあるコーヒーと水、彼の汚れ膨らんだ大きめの荷物。そんな幾つかのものが頭の中でウロウロと交差してこちらも何とも言えない気分になる。彼はその頃毎朝来ては長い時間そうやって粘ってましたが、やがて見なくなり僕も彼のことを忘れ、という次第。
どうして僕はドーナツ奢らなかったんですかね。あんなときに限って色々と考えてしまって機会を逃すんですよ。サッと出来ないんです。
十年程前のことでしたかね、そんなことがあったのも。それから世の中は更に更に悪くなり殺伐さも年々増して今はコロナ。でもですね、人情だけは失いたくはないですね。そう思いますね。
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