とても小さいウランガラス

とても小さいウランガラス(5,0 x 3,8 cm)。イギリス製で時代は1880〜1900年です。底部だけがウランガラスの緑色でこの形の物は見たことがなく結構珍しいと思います。ボールの部分は縦筋の型模様が入っています。

去年の終わりに前の店を引き払いました。全ての物を運び出し、お店だった空間が空になるのを見るのは何とも言えず不思議な気分でした。二十三年分の思い出があるかと言えばありますが、沢山あって何も頭に浮かんで来ない。物を売った記憶より色んな人と色んな話しをした印象が強いですね。ただ店の物を片付けていたときに思ったんですが、あの場所ではもうあれ以上の展開は望めなかった、もう何かが一杯一杯で次に行くところはなかったんだな、と。そんなことを埃にまみれたアンティークを箱から出して片付けていたときに思いました。次に行くにはあの場所を出るしかなかった、そう感じました。それと時代の変化も移転の要因としては大きいですね。店を開いたのは1998年、まだぎりぎりとは言え、趣味のお店が路面で普通に成り立つ時代でした。あの頃はロンドンでもアムステルダムでも街を歩けばちょっと入った所にアンティークショップがあって、暇そうにしている年配の店主がコーヒーでも飲みながらいたりして、どうやってお店が成り立ってるんだろうと不思議に思ったりした訳ですが、その内にそんなお店の殆どが街から消えた訳です。

僕がいた通りもここ一二年はスマホ片手に絶えず離さずウロウロする若い子が増えて来て、僕の店にもただ入って触って出て行くの繰り返し。二百年前の物だろうが二千年前の物だろうが関係なし、彼らには全ての物はスマホと言うフィルターを通してのみ意味を持つようで、その暴力性には全くもって気付いてないし、自分が置かれている奴属状態に対する全くの無知。この人種の往来が結構ストレスでしたね。

今日の夕刊に書いてありましたが、今アナログレコードの人気が出て来てるらしいです。僕もアナログレコードを数百枚持っているのでアナログプレーヤーを購入しようかと考えています。店には昔アイルランドで買った蓄音機もあるのでこれも修理に出して聴こうと考えています。レコードの人気再来に見るようにアナログな物に惹かれて行く気持ちはとても理解出来ますし、人間はアナログとデジタルの間でバランスを取りながら生きていかないとデジタルだけでは壊れるんじゃないかなと思います。