一見トルソーに見えますが、、。

一見トルソー風のオブジェ(16,5 x 11,5 cm)に見えますが、これは革の型抜きの道具。下の鉄の部分に工房名が SALMON & JACKSON と入っていますね。19世紀後半くらいの時代だと思います。上から木槌で叩いて革製品の部品を型抜きした物です。昔、イギリス南西部の街で仕入れました。小さな街で古い凸凹の石畳の坂を登って行くと、登り詰めた辺りに若い人がやっているアンティークショップがあり、そこで中世の木彫りの天使とこの木の道具を見つけ買い求めました。二十年近くも前のことですね。その店ではこの道具は「トルソー」と書いてあり、店の主人もアンティークの知識はそこまででもなくセンスでやっているような感じで、店の佇まいも何処となく店を始めて間もないような印象がしたのを覚えています。イギリスの田舎で小さな街に行くと一つ二つはアンティークのお店が必ずあった、今から思えば懐かしい良き時代の話しですね。夕暮れで暗くなる前の坂道を登っていると間口の小さなお店にやけに派手な明かりが灯り、その奥のほうからジュークボックスの陽気で何処か哀しい音楽が大きく聞こえていて、それを聴きながら過ぎていくときに背後からの音が伸びたように少しずつ小さくなり、暗い石畳の細道を俯き加減に眺めながら歩いてると自分が映画のワンシーンの中を歩いているような錯覚を感じたのも忘れませんね。そんな思い出のあるこのトルソー風の道具です。こうやって新しい店に置いてみると改めて美しく見えて、よくぞ今迄売れずにがんばってくれたな、と労いたい気分にもなるから面白いです。