メシャムのパイプ

メシャム(海泡石)のパイプ(長さ 16,2 cm)、イギリスの物で時代は1870〜80年。吸い口は琥珀にも見えますが樹脂で出来ています。ボールの部分は元は真っ白だったのですが吸い込まれてここまでの色に育ったのです。煙道も細くタバコを入れるボールの部分も小さくて、吸うのが難しいパイプです。加えて、古いパイプには其々に固有のリズムがあり、そのリズムに合わせるようにして吸ってあげないといけません。あくまでもパイプが主人でこちらは従者なのです。俺に合わせろ、みたいな吸い方をする人はパイプを壊しますね早かれ遅かれ。とてもかっこいいパイプですが、それだけじゃだめ、かっこつけるために吸うんじゃないんでして、吸うことが偶々かっこよくもある、そんな物なんです。売り物ですが、誰にでも売るわけじゃありません。これを綺麗に吸ってくれる人のところに行ってくれればいいと思っています。まあ、きちっと吸える人じゃないとこのパイプは似合いませんしね。とても美味しいですよこれで吸うと。

趣味の物の似合う似合わないって難しいですね。時計でも車でも靴でも、目立ち過ぎずにさり気なくてサラッと似合ってるのが一番いいですね。物だけが浮いたように目立ってるとかえって見てるこっちが恥ずかしくなってしまう。最近はそういった趣味の物をさり気なく着こなしてる人が少なくなったような気がしますね。おしゃれな人が減ったんでしょう。

昨日タワレコでエミール・ギレリスのCDのボックスセット(ワーナー・クラシクス)を買いました。最高です。こんな演奏聴いていたらもう何も要りませんよ。エミール・ギレリスは昔彼のモーツァルトのピアノソナタをCDで聴いて、余りもの美しさに驚いたんです。今回のCDにもモーツァルトのピアノソナタやショスタコーヴィチのプレリュードとフーガが少し入っていますが、素晴らしいの一言に尽きます。

世の中からおしゃれな人が減るのは単にファッションの問題ではなくて、それは良くないことで、それだけ人間が保守化して詰まらなくなってることの現れなんです。街を歩いててすれ違う人の中に忘れ難い雰囲気の人がたまにはいないといけないんです。新聞などでたまに有名な評論家や作家の写真が載っていて、腕にしているブランド風の時計がやけに浮いて見えてたりすると、僕は思うんですね、こいつ胡散臭いな、と。書いてることが一見立派でも、そんなちょっとしたところにウソがはみ出してるんです。

では、皆さんお元気で。コロナのせいか、最近私はユニクロとSWATCHばかり身に付けているのでおしゃれからは二万キロくらい離れたところにいます。