1780〜1800年頃の地味なグラス

高さ8〜8,5cmのイギリスの古いグラス。厚手のカット無し。時代は1780〜1800年頃。地味で一見特徴などなさそうに見える物。でも、こう言うグラスこそ長年使い続けると離れ難い友になる。そんなグラス。

たまに変わった客が来る。二年に一人くらいかな、いや、きっと客とも呼べないような来店者。グラスを使う商売をしてるらしく、僕にイギリスのアンティークグラスの見分け方や特徴について色々と訊いてくる。そのときは僕ものせられて色々余計なことまで喋ってしまう。そうやってこの愛想のいい来店者は僕からグラスについてのイロハを盗んでいく。最初から買う気などない。買う素振りは見せるけど、そんな気はないのだ最初から。ただ僕からグラスについて色々聞き出しては、また何処かで役に立てようと忙しい。それに、こんな奴に限って矢鱈と笑顔を振り撒くのが上手だ。その笑顔にのせられ僕も喋る。

今朝、そんな四十絡みの男のことを思い出し、Steal & Smile、と名付けてみた。笑顔で盗む奴。きっと人生上手く渡ってると自信たっぷりなのだろう。まあある意味上手にも渡ってるのかもしれない。僕より若いのに、僕より稼いでいるようだし。僕は笑顔はダメかな、第一笑顔の前に顔が引きつってしまうから。この、Steal & Smile、はこの街にも何人か思い当たる奴はいる。確かに儲かってもいるみたいだ。笑顔で色んな人から盗み続ける奴。でも、僕は思ってしまう。そんな人生の行き着く先は何処なんだろうか、と。それに、四十、五十まではギリギリ盗めても、そんなに何時までも人生盗む側に居続けることは難しいと思うのだが。不思議な人種だ。またきっとこの、新顔の、Steal & Smile、が来店したら笑顔につられてついつい余計なことを僕は喋るのだと思う。