小松隆行 「料理 小松」(前編)

「料理 小松」言わずと知れた金沢の有名店。店主の小松隆行さんにインタヴューすることになった、「小松」で随時アルバイト、従業員を募集しているのだが中々彼が求めている人材(スタッフ)が見つからないので、ぼくが、それならぼくの店のホームページで小松さんの記事を書いて募集してみませんか、と提案したのが始まりで、折角なら、募集だけでなく読み物としても面白いものにしたいと考え彼に色々と話して貰うことにした。ミシュラン三つ星のお店でもある「料理 小松」の小松隆行さんが何を思いどんな考えで日々店を営まれているのか、彼の料理に対する想い、どのような気持ち、信念でここまで頑張ってこられたのか、料理 小松を「料理 小松」たらしめているものは何か、などを訊いてみた。

(この記事を読まれて)ご興味ある方は「フェルメール」のホームページにある電話又はメールにご連絡下さい。私が窓口になります。お待ちしております。

(接客について)

「何処までお客様に気遣いが出来るか、お客様が求めているものを(こちらが)先に感じとれるかですね。自分なんか他所に食べに行ってもやっぱり笑顔で一番にやられますし、先ず笑顔、それと気配り、一つのことだけじゃなくお客様の顔を見ながら仕事をする、そうすればお客様が何を求めているか自然と分かるんです」(話し手・小松隆行。以下略)

(料理に対する想い)

「ぼくが最終的に目指したい料理は素朴な料理、飾らない料理、食べて本当に美味しい料理、それが一番上だと思います。自分はそこに辿り着くのに頑張ってます。今の自分が憧れて食べに行ってるような先輩たちも最初はちょっと気取った見栄えのいい料理なんかをしてたと思うんですけど、最終的にはそこにいくんですよ。だから、削ぎ落とされてってもう本当に何でもない料理ですよね」

(小松さんの修行時代)

「昔、ちょっと甘えてたところが修行時代にありまして先輩が抜けて自然と上のポジションに就いたんです、でも腕というか技術が追い付いてないまま上にいってしまって、ナンバー2とかになってしまうと下に板前一杯いますから『小松がする仕事ではない』みたいな感じで下の仕事はぼくじゃなくその子らがしたんですよ、そしたらぼくはそこに不安を感じて、自分はまだ出来てないのにこんなになって、という不安で自信がなくなったときがありましたね。それで、また店変わって一から全部やってやろうと思って下のドブ掃除までやってやろうと思って全部やったんですよ、それは何故かというと、そこの大将は、若い衆三人いたんですが、箒と塵取り持って自分で店の周り掃除してるんですよ。そんなのぼくの育ったとこじゃ考えられない、でもそこでは大将自らしてたんで、これやな、これが自分で店することやな、というのに気付いたんです。そこからはもうがむしゃらでしたね」

(今の若い子に欠けているものは)

「ぼくらの頃は技術をしっかり、みっちり基本を学んで、修業は十年というのが当たり前の時代だったので、そうしたら一つのことやらせても凄い上手なんです、時間掛けてるので、一つひとつの仕事がしっかり出来る。でも今の子は何の仕事でもそうですが、転々とするのでちょっと薄っぺらいな、と思います、まぁ、僕らと比べればですけどね。その一つの仕事に費やした時間の長さが料理に矢張り出ますね。話しは少し変わりますが、お客様のほうも料理人を駄目にしてるものがあると思います」

「料理 小松」は2009年7月に定食屋だった九坪の建物を借りてオープン、最初は五ヶ月間だけ昼間に1300円で鯛茶漬けを出していた。ここが「小松」の始まりでそこから彼は一歩いっぽ着実に階段を登っていき、2017年8月には今の場所に店を新しく建てて移転。今や美食家集う金沢で料理屋の代名詞として「小松」の名は知れ渡っている。僕自身彼との付き合いの中で彼の人柄を形容するなら、「律儀」という言葉が先ず浮かぶ、昭和の昔気質(かたぎ)の「一本気」なところ、又は「不器用さの魅力」と言ってもいいかもしれない。彼は五十代半ばだがそんな雰囲気を纏(まと)う最後世代の料理人だろう、彼には何処となくて古風なところがあり、その「真っ直ぐ」さが彼の魅力、彼の職人としての気質を成しているように思える。そんな昔の愚直にも通じ得る「真っ直ぐ」さを今に受け継いでいる数少ない一人なのかもしれない。(後編に続く)